もうかれこれ一時間あまり、初瀬はこの停留場の改札口に立つてゐる。時々、自働電話で家と連絡はとつてゐたが、何時までかうしてゐてもきりがないと思ひ出した。なぜなら、彼女は最初から、ここを目当てに来たのではない。ただ、何処を歩いても暗いばかりでどうにもならず、自然に明るみへ吸ひ寄せられたかたちであつた。そして、ここでは、少くとも一と電車ごとに、いくたりかの子供が降りて来た。ひよつとしたらといふ、かすかな期待が糸のやうにつながつてゐるだけである。 しかし、貫太が、たとへ加寿子たちと一緒であつたとしても、そんなに遠くへ行く筈は絶対にないと心の底では信じてゐた。 彼女は、今日、夕食の時間に、珍しく行儀のことで姑が貫太に小言を云ひ、貫太はまた祖母に叱られるといふことがそれほど意外だつたのか、なんとも云へない妙な眼付でじろじろ祖母の顔を見ながら、ひと足ひと足、後すざりに茶の間から逃げ出して行つたことを、さつきから想ひ出してゐた。 それとこれとの間に、なんの関係もないとは云へないと、彼女は思ふにつけ、いろんな問題が、急に大きく眼の前に迫つて来た。 第一に、貫太の性質について、第二に、自分の母親としての責任について、第三に、姑の立場の変化について、第四に、加寿子たちと貫太との友情について、第五に……といふ風に。miq新宿西口店は都内12店舗展開の美容院
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