病院。圭次の病室。 看護婦が忙しさうに出たり入つたりしてゐる。たけ子は圭次の顔をのぞき込んでゐる。医者が来て注射をする。 5 平造の家。――小使風の男が玄関を開ける。 ――佐竹病院から参りました。すぐ皆さん、病院へおいで下さい、坊ちやんの御容態が少しお悪いやうですから……。 富子が飛んで出て来る。すぐに奥にはいる。 富子は座敷と茶の間との間を行つたり来たりする。そして、おろおろ声で、 ――お父さんはどうしたらいゝだらう。 6 病院。 圭次の枕元には、たけ子と看護婦と医師とが附きそつてゐる。そこへ、富子が、息せき切つてはいつて来る。 ――お父さんは、何処へいらつしやつたか、わからないの。 医師は脈を取りながら、 ――まだ大丈夫です。 一同は気が気でないといふ風に、絶えず戸口の方に眼をやる。富子だけが、眼にハンケチを当てゝゐる。 蕨 歯医者

   


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