非人法師はもちろん法師の徒ではあるが、もともと社会の落伍者としての自度の法師で、かの三善清行の指摘した如く、家に妻子を蓄え、口に腥※を啖い、形は沙門の如く、心は屠児の如しと言われた破戒法師であった。それで時には餌取法師とも呼ばれ、前記の如く真言宗や天台宗の如き貴族宗では、非常にこれを嫌って寄せつけなかったものであったが、しかしまた一方では、毫もこれを忌まぬ宗旨もないではなかった。念仏宗門すなわちこれである。阿弥陀如来はいかなる極重悪人でも、ことごとくこれを極楽に摂取するというのである。 念仏の教えは古くから我が国に伝わり、餌取法師と呼ばれて、口に牛馬の肉を喰い、家に妻子を有する非人の徒でも、念仏の功徳によって極楽に往生することが出来るという思想は、既に平安朝からあって、「今昔物話」にその例話が幾つも出ているのである。しかもその特にこれを宣伝して非人済度につとめたのは、空也上人が初めであった。 空也上人は延喜の頃に生れた人で、ちょうどかの濫僧すなわち非人法師の徒が、しきりに発生した時代の人である。彼は盛んに念仏宗を下層民の間に宣伝して、口に念仏を唱えしめて、彼らに極楽往生の安心を与えたのであった。飛蚊症 おすすめ
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