咲子嫂さまを離縁してお兄さまと千登世さまとに歸つていたゞけば萬事解決します。しかし、それでは大江の家として親族への義理、世間への手前がゆるしません。咲子嫂さまは相變らず一萬圓くれとか、でなかつたら裁判沙汰にするとか息卷いて、質の惡い仲人とぐるになつてお父さまをくるしめてゐます。何んといつてもお兄さまが不可いのです。どうして厭なら厭嫌ひなら嫌ひで嫂さまと正式に別れた上で千登世さまと一緒にならなかつたのです。あんな無茶なことをなさるから問題がいよ/\複雜になつて、相互の感情がこぢれて來たのです。今では縺を解かうにも緒さへ見つからない始末ぢやありませんか。 けれどもわたくしお兄さまのお心も理解してあげます。お兄さまとお嫂さまとの過ぎる幾年間の生活に思ひ及ぶ時、今度のことがお兄さまの一時の氣紛れな出來ごころとは思はれません。或ひは當然すぎる程當然であつたかもしれません。何時かの親族會議では咲子嫂さまを離縁したらいゝとの提議が多かつたのです。それを嫂さまは逸早く嗅知つて、一文も金は要らぬから敏雄だけは貰つて行くと言つて敏雄を連れていきなり實家に歸つてしまつたのです。しかも敏雄はお父さまにとつては眼に入れても痛くないたつた一粒の孫ですもの。敏雄なしにはお父さまは夜の眼も睡れないのです。お父さまはお母さまと一つしよに、Y町のお實家に詫びに行らして嫂さまと敏雄とを連れ戻したのです。迚も敏雄とお嫂さまを離すことは出來ません。離すことは慘酷です。いぢらしいのは敏ちやんぢやありませんか。 高級デリヘル 銀座
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