秀策 なんだ、それや……。(みんなの顔を照れ臭さうに眺めまはし)お母さんは、今日は、よほどどうかしとる。 秀策、退場。 思文 たうとう、やるのかい、姉さん。 登志子 しやうがないわ。あんたのせゐよ。 思文 僕の知つたことぢやないさ。こんな学校、もともと存在理由はないんだ。おやぢの酔興とおふくろの名誉慾で、でつちあげた、インチキ学校ぢやないか。 登志子 なにを云ふの! 仕事つて、どこにでもあるもんぢやないことよ。 思文 姉さんの仕事? あるさ、いくらだつて……。姉さんはやつぱり派手なことが好きなんだよ。 登志子 派手かしら、こんな仕事……。もともと姉さんの柄ぢやないことぐらゐ知つてるわ。でも、おだてられれば、やれさうな気がするだけよ。義兄さんだつて、あたしがこんなことをしてるの見たら、気が狂つたのかと思ふでせう。あたし、相馬さんがうしろについててくれるから、安心なの。あたしは、お芝居をするだけでいいんだから……。 思文 芝居か。姉さんは正直でいいや。どうせそんなもんさ。おふくろは芝居をやりすぎて舞台からころげ落ちたんだ。 登志子 さうぢやないの。芝居つてことがわからなくなつたんだわ。でもね、姉さんはあんたにひとつお願ひがあるの。速水家のためでもなく、あたしのためでもない、ただ、この学校のためにお願ひがあるの。 思文 もうそんな白がでるのかい。このインチキ学校のために、僕がなにをすればいいの? 作業着
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